認知症寒がり対策【専門家の視点から2つの対応方法】
リハビリの専門家である作業療法士として、医療や介護分野で長年活動している私が説明します。
目次
認知症の方が寒さを感じる理由
認知症の方が寒さを感じる理由は、大きく分けて2つに分けることが出来ます。
- 高齢による理由
- 認知症による理由
それぞれについて説明をする前に、まずは、ひとの体温調節の仕組みについて説明をしていきます。
人の体温調節の仕組み
ひとは、外の温度を皮膚で感じ取ります。
皮膚で感じ取った温度によって、脳の視床下部(ししょうかぶ)から必要な命令が出されます。
「暑い」場合は、汗をかくなど身体から熱を逃がす命令。「寒い」場合は、震えるなど身体から熱を逃がさない(熱をつくる)命令を出します。
私達は、これらの働きを自動的(無意識)に行うことで、体温を一定に保つことができています。
☞自律性と行動性の体温調節
無意識の生体反応(汗・震え)による体温調節を自律性。寒いので暖房をつけるなど、意識的に行う体温調節を行動性体温調節と言います。⇒行動性体温調節のメカニズムは殆ど分かっていません。
高齢による理由
高齢による理由は、さらに3つに分けることができます。
- 血流量の調節機能低下
- 基礎代謝の低下
- 活動量の低下
血流量の低下
「寒い」場合、皮膚近くの血管が縮まることで血流を少なくします。結果、身体から熱が逃げるのを防ぐことができます。
しかし、高齢者の場合、血管が縮まる反応が悪く(遅く)なることで、身体から熱が逃げやすくなってしまいます。
引用データ:テルモ体温研究所 体温調節機能が低下してくる
基礎代謝の低下
「基礎代謝=熱を作る力」とも言えます。
一般的に高齢になると、基礎代謝が低下していきます。つまり、自身で熱を作る力が低下していくとも言えます。
引用データ:厚生労働省 e-ヘルスネット
活動量の低下
ひとが熱を作る仕組みは、基礎代謝に加えて「身体活動熱産生」があります。要は身体を動かして温まるということですね。
高齢者になると、一般的には活動量が低下するため、熱を作る機会も減ると言えます。
☞食事誘発性熱産生
食事の際に、内臓が消化吸収活動を行って熱を発生することを「食事誘発性熱産生」といいます。
認知症による理由
認知症による理由は、さらに2つに分けることができます。
- 自律神経症状
- 中核症状
自律神経症状
認知症の一つである「レビー小体型認知症」の場合、冒頭にて説明した、体温調節の要である「自律神経」に症状が現れることがあります。
中核症状
認知症による脳機能低下の結果起こる症状を「中核症状」と言います。
中核症状の一つに「見当識障害」が挙げられます。
見当識障害とは、時間や場所を正確に把握する能力が低下する症状になります。
見当識障害が進むと、季節感のズレが起こってきます。結果、必要以上に寒がるといった反応が出てきます。
認知症の方の寒がり対策
全ての問題に共通する対策として2つ挙げることが出来ます。
- 運動習慣を取り入れる
- 生活習慣の改善
運動習慣を取り入れる
特に「高齢による理由」への対策になります。
運動習慣を取り入れることで、血流量の調節機能、基礎代謝、活動量の向上に繋げることが出来ます。
生活習慣の改善
特に「認知症による理由」への対策になります。
認知症による理由(自律神経症状・中核症状)に関しては、専門的な対処が基本となります。
そのうえで、生活習慣の改善(規則正しい生活)が効果的と言えます。
低体温症は注意
低体温症は身体の機能が働く為の体内温度を保つことが出来なくなった状態を指します。
認知症高齢者の場合は特にリスクが高くなるため注意が必要です。
一般的には直腸温度が35度以下になった場合を指しますが、家庭で直腸温度を測るのは簡単ではありません。
呼びかけに対する反応が薄い、フラフラしているなど、いつもと違う様子の場合は直ぐにかかりつけの先生への相談や救急要請を検討しましょう。
まとめ
- 認知症の方が寒さを感じるパターンは2つ(高齢・認知症)に分けれらる
- ひとの体温調節は「視床下部」が中心となって自動的に管理されている
- 高齢による理由は3つ(血流・基礎代謝・活動量低下)に分けられる
- 認知症による理由は2つ(自律神経症状・中核症状)に分けられる
- 認知症の方の寒がり対策は2つ(運動習慣を取り入れる・生活習慣改善)となる
- 低体温症が疑われる場合は素早い対応が必要