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入浴動作「身体が不自由な方の動作方法」

目次

入浴とは

入浴とは身体を清潔に保つ為だけではなく、心身のリラックスなど精神的効果の側面も考えられます。特に日本人は、入浴を好んで(重要視)する傾向があり、古くから行われてきた重要な行為でもあります。

入浴の効果
① 温熱効果⇒お湯の温熱作用により血流改善や発汗作用促進などの効果が得られる。
② 水圧効果⇒身体への適度な圧力により、毛細血管などに停滞している血流を心臓に押し戻す効果が得られる。
③ 浮力効果⇒重力からの解放により、身体を支えている筋肉をリラックスさせる効果が得られる。
上記3点に加えて、入眠導入の効果(深部体温上昇から降下による入眠作用)や一人になる空間の創出など派生的効果も 考えられる。

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入浴動作の注意点

入浴動作は日常生活動作(以下ADL動作)の中でも、難易度や危険度が高い動作と言えます。

入浴動作の特徴
① 更衣、移動、洗体、移乗など様々な動作の複合体で成り立っている。
② 裸体で行う為、羞恥心などを考慮する必要がある。
③ 裸体で行う為、温度差によるヒートショックなどに注意する必要がある。
④ 裸体で行う為、装具などの装着が難しい。
⑤ お湯を利用する為、溺れるなどの事故に注意する必要がある。
⑥ お湯の利用や装具を使用することが出来ない為、転倒などに注意する必要がある。
⑦ 上記理由により、疲労度が高い動作である。

入浴動作の流れ

①更衣(服の着脱)

入浴時の更衣は一般的には脱衣スペースで立位にて行うことになります。しかし、脱衣スペースは狭いケースが多く、片麻痺など立位バランスが低下している場合では、転倒のリスクも考える必要があります。

また、入浴後は体温の低下や身体が濡れていることによる服の着辛さなどの問題も考える必要があります。

②脱衣所⇔浴室間の移動

脱衣所と浴室間の移動は基本的には裸で行うことになります。その為、普段使用している杖や装具などの歩行補助具を使用することが難しい場合があります。

その他、浴室内は床面が濡れていることがある為、転倒に注意する必要があります。加えて、脱衣所や浴室はスペース(狭い)や材質(ユニットバス)の問題により、手すりを設置する位置や数が限定される場合もあります。

③洗体・洗髪

「裸、濡れている、狭い、寒い(暑い)、薄暗い(目をつぶっての動作)」など、その他のADL動作と比べても特殊(厳しい)環境での能力遂行を求められる動作となります。また、カランの温度設定を間違えて火傷するなどのリスクも考えられます。

④浴槽への移乗

入浴動作の中でも最もリスクが高く注意を払う必要がある動作です。浴槽内には大量のお湯が存在している為、誤って転倒した場合、溺死などの重大な事故に繋がる可能性があります。

ベッドや車椅子への移乗と比べて、特殊な環境(上記③参照)で移乗する為、細心の注意と技術が求められる動作となります。

⑤浴槽内での姿勢保持(立ち上がり・座り込み)

通常のADL動作(基本動作を含む)とは、重力下にて如何に身体をコントロール出来るかが重要となります。しかし、浴槽内の動作の場合、水の浮力下にて如何に身体をコントロール出来るかが重要となります。

つまり、普段とは異なる身体のコントロールが求められるのです。健康な身体であれば無意識に浮力に合わせて身体をコントロールすることが出来ますが、心身機能に何等かの問題(障害)がある場合は途端に難しい動作となってしまいます。

極端な例えですが、人生で初めてプールに入って泳ぎを習うような感覚に近いのかもしれません。例えば、片麻痺の患者さんが初めて浴槽に入った時は、ただ座っておくことだけでも難しい場合(腰が浮いてしまう)などもよくある事例です。
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入浴動作別のポイント

①更衣(服の着脱)時

脱衣所のスペースに限りはありますが、腰掛けを準備しましょう。腰掛に座ることで、各段に安定して安全に更衣を行うことが出来ます。

寒い時期などは特に、脱衣所専用の暖房器具を設置しましょう。ヒートショックの予防だけでなく、ゆっくりと落ち着いて更衣を行うことが出来ます。

衣類なども工夫が必要となります。化学繊維などの吸湿性の高い素材やゆったりとしたサイズなどは、濡れた身体でもスムーズに更衣を行うことが出来ます。
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②脱衣所⇔浴室間の移動時

手すりの設置に加えて、脱衣所と浴室間に段差がある場合は段差解消を行いましょう。また、歩行での移動が困難な場合は、シャワーキャリー(入浴用車椅子)などを利用することも検討します。

脱衣所にバスマットなどを敷く場合も多いと思いますが、歩行が不安定な方の場合、バスマットの淵などに引っかかって転倒などの危険があります。脱衣所の全面に敷くなどの工夫が必要となります。

浴室内の床面が濡れている場合には非常に滑り易くなっています。最近のユニットバスなどは床面速乾機能が付いている物もありますが、昔ながらのタイル材などは特に注意が必要となります。

③洗体・洗髪時

濡れた状態で目をつぶります。立位で行ったり、床面に座って行うことは転倒のリスクが高くなります。浴室用の椅子などの利用を検討します。

片麻痺や上肢機能に障害がある場合は洗体や洗髪が困難になります。ブラシ付きのたわしやループ付きタオルなどの使用を検討します。
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④浴槽への移乗時

立位にて「またぎ」での浴槽への移動は転倒の危険性が非常に高くなります。バスボードなどを利用して座位にて行うことで転倒の危険性を減らすことが出来ます。

片麻痺の方の場合は良い方(非麻痺側)の下肢から浴槽に入るようにします。良い方から先に浴槽に入れることで浴槽内での踏ん張りを確実に行えるように準備することができます。

浴槽移乗時の身体の動き
①バスボードに座る
②良い方(非麻痺側)の下肢を浴槽内に入れる
③麻痺側の下肢(膝の裏側あたり)を良い方の上肢で持ち上げる⇒重心は前方移動
④そのまま、麻痺側の下肢を持ち上げて浴槽内に入れる⇒重心は後方移動
⑤臀部を浴槽側へずらしてから浴槽内に身体全体を入れる⇒重心は横移動
※浴槽移乗は重心の大きな移動を伴う動作である

重心の大きな移動を伴うとは動作とは、それだけ難易度が高い動作であるとも言えます。動作が難しい場合は背中側に壁がくるように設置したり、手すりを設置するなどすることで、難易度を落とすことができます。

⑤浴槽内での姿勢保持時

浴槽内で良く見られるのが、腰が浮いてしまう問題です。腰を浮かないようにする為に必要な動きとは股関節屈曲(股関節を曲げる)と体幹前傾(身体を前に傾ける)となります。これらの動きをお湯の中(浮力下)でも行えるようになることがカギとなります。

必用な動きを行いやすくする為に、浴槽内椅子や手すりの利用を検討することも出来ます。

公的なサービスの利用も検討

冒頭にて述べたように、入浴動作は難易度や危険度の高い動作といえます。その為、本人や介助者(家族)にも大きな負担を強いる可能性があります。

自宅にて自身での入浴が難しい場合は、公的なサービスの利用も検討してみましょう。代表的な公的サービスとしては、介護保険サービスが挙げられます。更に、介護保険サービスの中でも入浴に関連するサービスとして「通所系サービス」「訪問入浴サービス」が挙げられます。

通所系サービス

通所リハビリテーション(デイケア)や通所介護(デイサービス)に併設する入浴施設を利用して入浴します。温泉のような立派な設備や寝たきりの方でも利用できる設備(機械浴)など施設により様々な種類があります。また、施設によっては入浴設備を備えていない(機能訓練特化型施設など)場合もあります。

いずれの場合も施設職員が入浴介助を行いますが、職員の配置状況なども様々です。自身のニーズに沿った内容であるかを必ず確認するようにしましょう。

訪問入浴サービス

専用の移動式浴槽をベッドの隣りまで運んで、看護師や介護職員が複数名体制にて入浴介助サービスを行います。寝たきりの状態であっても、専門の職員がリスク管理を行いながら入浴介助を行ってくれます。

いずれのサービスも、介護保険の要介護認定や医師の許可が必要なことなどの条件がありますが、検討する価値はあるでしょう。

入浴動作まとめ

  • 入浴効果⇒①温熱効果、②水圧効果、③浮力効果
  • 入浴動作はADL動作の中でも難易度や危険度の高い動作となる
  • 入浴動作は各段階に分けて問題分析、アプローチを行う必要がある
  • 自身での入浴が難しい場合は公的サービスの利用も検討する
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