低栄養の高齢者に必要な3つの対策【食事・運動・補助食品】
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高齢者の食事傾向やタンパク質(アミノ酸)についてや対策について、医療・介護の現場で長年、作業療法士として関わってきた私が説明していきます。
目次
高齢者の食事は薄い・少ない
高齢者は食事の好みの変化(さっぱりとした物を好む)、家族構成の変化(子供の独立)などで食事内容の偏りが目立つ傾向にあります。
特に「肉類」は「固い・濃い味付けが嫌い」などの理由にて、食卓に上がる機会が減ってきています。
少し古い調査ではありますが、「肉類」が高齢者の食卓に上がる機会は「約6%」との報告も挙がっています。
加えて、食事量そのものが少なく、必要量を満たしていないケースも多くあります。
高齢者の食事傾向
- 薄い味付け
- 食事量が少ない
- タンパク源の偏り⇒植物性タンパク質>動物性タンパク質
- 作り置きが多く同じメニューを数日続ける
- 食事内容(栄養)が偏る
- 食事量が少ない⇒低栄養
引用データ:厚生労働省 平成28年国民健康・栄養調査報告
タンパク質の働き
タンパク質は人間の身体を構成する最も基本的な要素となります。代表的な機能は以下のようになります。
- 酵素タンパク質⇒科学反応を促進させる触媒。
- 構造タンパク質⇒皮膚、腱、軟骨、骨などをつくる「コラーゲン」。毛、爪などをつくる「ケラチン」など身体をつくる。
- 輸送タンパク質⇒酸素を輸送する「ヘモグロビン」。脂質などを輸送する「アルブミン」など身体に必要な物質を運ぶ。
- 貯蔵タンパク質⇒細胞内に栄養を貯蔵する。
- 収縮タンパク質⇒筋肉を構成する「アクチン」「ミオシン」など。筋肉の収縮・弛緩をコントロールして関節運動を担う。
- 防御タンパク質⇒免疫を担う。
どうですか?タンパク質というと、「身体をつくる」といったイメージしかない方も多いですが、実は、様々な役割を担っていることが分かりますね。
タンパク質が不足することで起こる問題
タンパク質が不足することで、特に深刻な問題として以下の項目が挙げられます。
- 筋肉量の減少⇒身体や臓器を動かすための筋肉が減少することで、運動をスムーズに行えなくなります。
- 免疫機能の低下⇒病気と闘う免疫機能が低下することで、病気に罹りやすくなります。
- 思考力の低下⇒ぼーっとして頭が働かない状態が続きます。また、そこから抑うつ症状などにつながることもあります。
- 代謝の低下⇒エネルギーを多く消費する筋肉が減少することで、太りやすくなります。
- 髪・肌のハリツヤがなくなる⇒ハリツヤがなくなることで、外見上の変化が悪い方向(年齢以上に見られる)に進みます。
タンパク質からアミノ酸への分解吸収
食事にて摂取したタンパク質はそのままでは吸収することができません。
いくつかの段階(消化酵素による分解)を経て、最終的に「アミノ酸」まで分解されて初めて吸収されることになります。
また、吸収されたアミノ酸は「DNA」の命令に基づいて、様々なタンパク質に再合成されることになります。
アミノ酸とは何?
「アミノ酸」とはタンパク質を最も基礎から構成する、全20種類からなる物質です。
私たちの身体の約5分の1は「タンパク質=アミノ酸」からできているといわれています。つまり、私たちの身体を構成する最も基本的な物質といえます。
「アミノ酸」は、身体の中で合成することが出来ず食事から摂取する必要がある「必須アミノ酸」と、身体の中で合成することができる「非必須アミノ酸」の2種類に分けることができます。
特に、「必須アミノ酸」は身体の中で合成することができないので、いかに効率的に摂取するかが重要となってきます。
必須アミノ酸(身体で合成不可)
- イソロイシン
- トリプトファン
- トレオニン
- バリン
- ヒスチジン
- フェニルアラニン
- メチオニン
- リジン
- ロイシン
非必須アミノ酸(身体で合成可)
- アスパラギン
- アスパラギン酸
- アラニン
- アルギニン
- グリシン
- グルタミン
- グルタミン酸
- システイン
- セリン
- プロリン
- チロシン
「アミノ酸スコア」と「アミノ酸の桶」
アミノ酸スコア
「アミノ酸」は特定の種類に偏ることなく、バランス良く摂取することが求められます。
以下、「アミノ酸スコア」は食品別にどの程度、各種アミノ酸がバランス良く含まれているかを示します。「100」に近い程、よりバランスが良いということになります。
出典:厚生労働省
上記表より分かるように「植物性タンパク質」よりも「動物性タンパク質」の方が、よりアミノ酸のバランスが良いことが分かります。
アミノ酸の桶
「アミノ酸」をバランス良く摂取することがなぜ重要なのでしょうか?
特に食事など外部から摂取する必要がある「必須アミノ酸」に関しては、どれか一つでも不足(100以下)する種類があると、その最低レベルでしか「タンパク質」を合成することができなくなるのです。
動物性タンパク質と植物性タンパク質の違い
動物性タンパク質
- メリット⇒各種アミノ酸をバランス良く含んでおり、効率的に摂取することができる。
- デメリット⇒脂質を多く含むものなどがあり、総じてカロリーが高い食品が多い。
植物性タンパク質
- メリット⇒食物繊維を含むものも有り、摂取カロリーを抑えることができる。
- デメリット⇒アミノ酸バランスが不十分な食品が多い、摂取カロリーが不足しがち。
冒頭にて述べたように、高齢者の食事では「植物性タンパク質」は比較的摂取できていると思われます。
加えて「動物性タンパク質」を積極的に摂取することで、より効率的に「タンパク質=アミノ酸」を吸収、利用することが可能となります。結果、より若々しく、より健康的に、より長く生活していくことが可能となるのです。
腎機能障害のタンパク質摂取は要注意
腎機能障害に罹っている方はタンパク質の摂取量に注意する必要があります。
腎機能障害の状態にもよりますが、場合によってはタンパク質の摂取量を調節する必要があります。
安易な自己判断はせずに必ずかかりつけ医の指示に従って、行動するようにしてください。
運動との併用が大切
「タンパク質」を摂取するだけでは、身体(筋肉)をつくることはできません。必ず「有酸素運動」や「レジスタンストレーニング」を無理のない範囲で併用することが重要となります。
栄養補助食品の効果的な摂取方法
冒頭でも説明したように、「タンパク質」から「アミノ酸」まで分解して吸収するには、幾つかの段階を必要とし時間を要します。
その為、食事での「タンパク質」摂取と並行して、運動直後(もしくは直前)に「栄養補助食品」を摂取することをお勧めします。
以下でご紹介する栄養補助食品は「タンパク質」を分解する段階を省くことができるため、効率的に「アミノ酸」を摂取することができます。