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三宅式記銘力検査の効果的な解釈・対応方法

三宅式記銘力検査とは

三宅式記銘力検査とは、「有関係対語(関係性の高い2つの単語)」、「無関係対語(関係性の低い2つの単語)」各々10組(合計20)の一方を提示した後に想起させるテストになります。言語性の一連の記憶過程(記銘・保持・再生)、時間軸による分類では即時~近時記憶を評価しています。

事前説明

「これから私が言葉を言いますので覚えて下さい」。「春…(間を置く)桜、魚…刺身、のように全部で10組の言葉を私が言います」。「次に、私が春と言ったら桜」。「魚と言ったら刺身のように答えて下さい」。

実施方法

「有関係対語」より実施します。10対の言葉を一定のペースで言います。その後、一対ごとに「煙草…?」の様に答えを確認していきます。全問正解でない場合は、合計3回まで繰り返します。次に「無関係対語」も同様の方法にて繰り返します。

解釈と課題

言語を介した評価方法ですので、失語症や難聴など言語的コミュニケーションに問題がある場合は正確な評価が困難となります。また、評価者からすると簡便に実施できる反面、評価を受ける側からすると負担感が大きい場合もあります(特に正答が出せない場合)。

解釈方法に関しても、カットオフ(異常ありなしを分けるライン)は明確ではありません。健常者による年齢別の平均点などは、幾つかの文献にて公表されています。しかし、平均点を比較してどう判断するのか?評価結果の解釈方法については、情報が少ないのが現状です。
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記憶のプロセス

三宅式記銘力検査の解釈を行う為には、まずは記憶のプロセスについて理解する必要があります。

記憶とは「記銘」「保持」「再生」能力によって成り立っています。それぞれの機能が役割を分担したうえで、日々膨大な量の出し入れが行われている記憶を司っているのです。

記憶機能の詳細な説明は以下のリンクをご参照下さい。

記憶プロセスに関しては、未解明な点も多く様々な議論がなされていますが、重要な役割を担っているといわれるのが「側頭葉」と「前頭葉」です。

神経学などの立場からでは、より細かく複雑に脳神経が関連し合っていると言われています。ただ、三宅式記銘力検査結果の解釈を行うには少々複雑過ぎます。よって、「側頭葉」と「前頭葉」という2つの視点に単純化してから考えていこうと思います。

「側頭葉」が担っている機能として、記憶の「保持」が挙げられます。様々な記憶を貯めておく貯蔵庫の役割を担っています。側頭葉障害が起こると、記憶の保持障害が引き起こされると考えられます。

一方、「前頭葉」が担っている機能では、記憶の「再生」が挙げられます。「側頭葉」にて貯蔵されている記憶の中から、必要な記憶を見つけて引き出す役割を担います。前頭葉障害が起こると、記憶の再生障害が引き起こされると考えられます。

障害パターン別解釈

冒頭にて述べたようにカットオフはハッキリしていません。幾つかの文献より世代別の平均点が報告されているのみです。したがって、現状は平均点と比較したうえで障害有無の目安程度で使用されているのではないでしょうか?

引用文献:三宅式記銘力検査 (東大脳研式記銘力検査)の 標準値 文献的検討  滝浦孝之

平均点との比較に加えて、私自身はもう一つの解釈方法を行っています。それは、「前頭葉型」記憶障害と「側頭葉型」記憶障害の判別です。下図は上表の健常群(老年期)をグラフ化したものです。

一般的には有関係対語は2回目以降には満点の10点前後。無関係対語も点数は低いものの徐々に点数が増えていっているのが分かります。多少の違いはあるものの記銘力に障害がない人(健常群)の場合は同様のグラフになると思われます。

私自身が三宅式記銘力検査を実施して経験したことがある障害パターンとして、以下のように大きく2つに分けることができます。

1つ目は、有関係対語は点数の上昇が見られるものの、無関係対語は点数の上昇が見られない(少ない)パターンです。仮に「前頭葉障害パターン」とします。

有関係対語とは、関連のある言葉をヒントとして利用することができます(以後Cue再生)。つまり、「前頭葉障害パターン」とは「記憶の再生(前頭葉機能)」過程に障害はあるが、「記憶の記銘・保持(側頭葉機能)」には問題がない可能性を示唆(断定はできない)します。

前頭葉障害パターンの対応方法

「前頭葉障害パターン」が出た場合、取るべき対策がハッキリとしてきます。それはCue再生の積極的な利用です。

毎日の薬を飲み忘れてしまう問題があるとします。その場合、「薬を飲む」と関連付けしたキーワード(Cue)を設定することで問題が解決できる場合があります。

例えば、食後に白湯を飲む習慣があるとします。その場合、「白湯と一緒に薬を飲みましょう」と声掛けをします。つまり、「白湯=薬」の関連付けを狙うのです。

単に「食後は薬をのみましょう」では意識付けは難しくなります。声掛けの内容に「白湯」というキーワードを固定化することで、意識付けを強化することを狙います。
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その他パターンの対応方法

その他としては、「側頭葉障害パターン」「前頭葉型と側頭葉型の混合パターン」などが考えられます。いずれの場合も、上表のように、点数上昇が乏しかったり、有関係対語と無関係対語の差がはっきりしないなどの特徴が見られます。

これらのパターンの場合、記憶保持(貯蔵)そのものに障害が出ている可能性が高くなります。安易にCueなどを提示しても、問題の解決が難しい場合もあります。

問題に関しては、より直接的な援助が有効になります。薬の飲み忘れがある場合は、介助者が食卓に薬を直接準備するなどの対応が考えられます。

解釈の注意点

引用文献として提示した健常群の点数は「平均点」です。標準化されているものではありません。よって、「平均点以下=異常」とはなりません。あくまでも、大まかな目安として捉える必要があります。

「前頭葉障害パターン」と「その他パターン」で分ける方法も、三宅式記銘力検査の結果だけで解釈してはいけません。その他の検査バッテリーや画像所見、日常生活上での問題点などを踏まえて総合的に判断する必要があります。

まとめ

  • 言語性の一連の記憶過程(記銘・保持・再生)、時間軸による分類では即時~近時記憶を評価。
  • 失語症や難聴など言語的コミュニケーションに問題がある場合は正確な評価が困難。
  • 「側頭葉」と「前頭葉」という2つの視点に単純化して解釈。
  • 「側頭葉」は記憶の保持(貯蔵)、「前頭葉」は記憶の再生を担う。
  • 「前頭葉障害パターン」が出た場合は、Cue再生を積極的に利用。
  • 「その他パターン」に関しては、より直接的な援助の実施。

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