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深部静脈血栓症の予防方法【エコノミークラス症候群はとても怖い!】

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こまったひと
こまったひと
深部静脈血栓症は怖いと聞くんだけど、具体的にどんな問題があるのかな?また、予防方法なんかもあるのかな?

深部静脈血栓症について、肺塞栓症との関係や予防方法などをリハビリテーション専門家の立場からご説明します。

目次

エコノミークラス症候群=静脈血栓症

エコノミークラス症候群とは、静脈血栓塞栓症(VTE)の「通称」として使われている言葉です。

10年以上前に、サッカーの日本代表選手が発症したことで有名となりましたが、長時間同じ姿勢を取り続けることが要因で、最悪の場合は「生命」にも関わる重大な病気でもあります。

「エコノミークラス」と呼ばれていますが、エコノミークラスの座席だけで発症する訳ではありません。最近は「旅行者血栓症」「ロングフライト血栓症」などと呼ばれています。

静脈血栓塞栓症(VTE)は深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)に分けられます。

深部静脈血栓症(DVT)は主に下肢(太もも~ふくろはぎ)の静脈に血栓(血の塊)が発生する病気です。

また、発生した血栓が何等かの拍子に血管から剥がれて血流とともに移動して、肺動脈を塞いでしまうと肺塞栓症(PE)と呼ばれる病気となります。

肺塞栓症(PE)は重篤な場合には「死」にもつながる恐ろしい病気となります。

 

深部静脈血栓症(DVT)

深部静脈血栓症(DVT)とは

深部静脈血栓症(DVT)とは、下肢あるいは上肢(うで)の深部静脈(筋肉の間など深い部分にある静脈)にて発生した血栓により血流障害を起こした状態を指します。

深部静脈血栓症(DVT)の好発部位

上肢に発生する頻度はかなり低く、大半は下肢に発生します。

下肢の中では上から腸骨静脈(骨盤)、大腿静脈(太もも)、ヒラメ筋静脈(ふくろはぎ)などが発生部位として挙げられますが、特にヒラメ筋は身体の中でも静脈容量が最も多いため、深部静脈血栓症(DVT)発症の頻度が最も高いと言われています。

深部静脈血栓症(DVT)の症状

片側下肢の疼痛(痛み)、腫脹(腫れ)、皮膚の変色(赤紫色)などが挙げられますが、無症状の場合もあります。

深部静脈血栓症(DVT)の発生因子

静脈(末梢→心臓)は動脈(心臓→末梢)と比べて血流の勢いが弱くなっています。

特に下肢の静脈は重力に逆らって心臓まで血液を戻す必要があるため、筋肉のポンプ作用(筋肉の運動により血管に圧をかける)の助けを借りる必要があります。

しかし、飛行機で長時間移動など運動機会が極端に減ると、静脈に血液が停滞して血栓が発生し易くなります。

その他、個人固有の発生因子として以下の表が挙げられます。

静脈血栓症(DVT)の付加的な危険因子の強度【肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会2004】出典

肺塞栓症(PE)

深部静脈血栓症(DVT)により発生した血栓が、何等かの拍子に血管から剥がれて血流とともに移動して、肺動脈(肺機能を支える重要な血管)を塞いでしまうと肺塞栓症(PE)と呼ばれる病気となります。

肺塞栓症(PE)となると「呼吸困難」「突然の胸痛」「頻回な呼吸」などの症状がみられ、重篤な場合はショック症状となり「死」にいたる場合もあります。

深部静脈血栓症(DVT)を伴わない肺塞栓症(PE)は特殊な事例に限られると言われています。

つまり、深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)は連続する一連の病気として考える必要があります(DVT→PE)。

よって、「生命」に関わる肺塞栓症(PE)を防止するためには、深部静脈血栓症(DVT)の予防が重要と言えます。

深部静脈血栓症(DVT)の予防方法

下肢の運動

静脈は血流の勢いが弱く血栓ができやすい環境となっています。

特に下肢は重力に逆らって心臓に血液を送り返す必要があるため、筋肉の「ポンプ作用」による助けが必要となります。

ヒトは運動(身体→関節を動かす)するためには筋肉が収縮することになります。

この筋肉が収縮する際に筋肉内にある深部静脈が圧迫されて血流が促進されることを筋肉の「ポンプ作用」といいます。

ちょうど、血圧計をイメージ(腕が血管、カフが筋肉→カフが膨らんで腕を圧迫)すると分かりやすいかもしれません。

深部静脈血栓症(DVT)は特にヒラメ筋(ふくろはぎ)が好発部位となります。よって、ヒラメ筋収縮を含む下肢の運動が重要になってきます。

ヒラメ筋の収縮を伴う運動とは「足関節底背屈(つま先を下上に動かす)」となります。この「足関節底背屈運動」を中心として効果的な「座ったままできる」下肢の運動を以下に列挙します。

  1. 足関節底背屈運動
  2. 足のつま先をブラブラとふる
  3. つま先を床につけてグルグルと円を描くように回す
  4. つま先で床をつまむようにする(床に足爪をたてるような)
  5. ふくらはぎに力を入れたり(筋肉を固く)抜いたり(筋肉を柔らかく)する
  6. 膝を真上に上げたり下げたりする
  7. こぶしを膝裏に入れて座面との間で圧迫する(短時間)
  8. 両足を床につけて、両手で座面を押して腰を少し浮かせる(両足部に体重をかけることで、足部を圧迫)
  9. 自身の手でふくろはぎを足首から膝に向かって血液を絞り出すよう(痛みがない程度)にマッサージする

①足関節底背屈

 

 

 

 

②足のつま先をブラブラと振る

 

 

 

 

③つま先を床につけてグルグルと円を描くように回す

 

 

 

 

④つま先で床をつまむようにする

 

 

 

 

⑤ふくらはぎに力を入れたり抜いたり

 

 

 

 

⑥膝を真上に上げたり下げたりする

 

 

 

 

⑦こぶしを膝裏に入れて座面との間で圧迫する

 

 

 

 

⑧両足を床につけて、両手で座面を押して腰を少し浮かせる

 

 

 

 

⑨自身の手でふくろはぎを足首から膝に向かってマッサージする

 

 

 

 

弾性ストッキング

弾性ストッキングとは、足首から太ももに向かうほど圧迫が弱くなる段階的圧迫となったストッキングです。弾性ストッキングの圧力により静脈を圧迫することで血流速度を改善させることを目的としています。

弾性ストッキングには膝下までの「ハイソックスタイプ」と太ももまでの「ストッキングタイプ」に分けられますが、効果の差は明らかではありません。よって、男性でも抵抗がなく着用が容易な「ハイソックスタイプ」をお勧めします。

弾性ストッキングを利用する際の注意点としては、皮膚面を強く生地にて圧迫するため「かゆみ」「発赤」などが発生する恐れがあること、生地のねじれなどがあると一部に必要以上の圧迫がかかる恐れがあることなどが挙げられます。

いずれの場合も正しく装着すること、定期的(1時間ごと)に皮膚面のチェックを行うことなどで回避することができます。

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その他

  1. 水分摂取⇒飛行機や車内は非常に乾燥が進んだ環境です。喉が渇く前から定期的に水分摂取を行いましょう。また、アルコールなどは利尿作用が働くので逆効果になります。通常の水や麦茶などがお勧めです。
  2. トイレ⇒トイレは我慢をしないようにしましょう。トイレまでの移動が運動にもなり一石二鳥です。また、飛行機や電車内では気軽にトイレに行けるように通路側に座りましょう。
  3. 足は組まない⇒足を組むことで血流が滞ります。
  4. 禁煙⇒タバコも血流が滞る要因となります。
  5. 緩めの服装を心掛ける⇒ベルトをきつく絞めるなども、血流が滞る要因となります。

観光の前にはかかりつけの先生に相談

ご高齢、下肢に麻痺があるなど、かかりつけの先生がいる場合は事前に相談をしましょう。

危険因子がある方でも、投薬コントロールなど事前の準備で対応可能な場合も多くあります。

もちろん、健康な方でも発症の危険はありますので、十分に注意して観光を楽しんで下さい。

 

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