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命にもつながる!高齢者の転倒と骨折

目次

高齢者の骨折は命を縮める?

高齢者の場合、運動機能や認知機能の衰えから転倒をし易くなると言われています。高齢者の転倒は、反射神経の衰えから身体を守ることができずに、骨折に直結することも多くなります。

「厚生労働省政策レポート」要介護別の原因割合(下図)によると、要支援1.2など軽症者は骨折などを含む廃用症候群の割合が多いことが分かります。逆に、要介護度が高く(重症者)になるにつれて脳血管疾患や認知症の割合が多くなることが分かります。
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引用文献:厚生労働省「政策レポート」

高齢者の場合は、重篤な病気発症(脳血管疾患による重度麻痺など)を除いて、段階的に状態が悪くなっていくパターンが多くを占めます。つまり、要支援1.2(軽症者)の段階である「入口」でいかに食い止めるかが重要となります。

「入口」で食い止めるためには、割合の多くを占める「関節疾患・骨折転倒」を防止することが効果的となります。

高齢者による代表的な骨折

高齢者の骨折は大きく分けると「橈骨遠位端骨折(手首)」「腰部圧迫骨折(腰)」「大腿骨頚部骨折(足の付け根)」の3種類が挙げられます。

橈骨遠位端骨折「手首」とは?

転倒したときに手の平をついて起こる骨折です。前腕部(肘~手首)には橈骨(親指側)と尺骨(小指側)という二本の骨がありますが、主に、橈骨の手首により近い側を骨折することが多くなります。特に骨粗鬆症などを有する高齢者などに多発します。

腰部圧迫骨折(腰)とは?

転倒などによって、しりもちをついたときなどに起こる骨折です。身体を支える背骨の中でも椎体と呼ばれる場所の骨折を指しますが、本来は非常に頑丈に出来ており簡単には潰れません。しかし、骨粗鬆症の高齢者など骨が脆くなっている場合に多発する骨折となります。

大腿骨頚部骨折(足の付け根)とは?

転倒などによって下半身に大きな力が加わったときに起こる骨折です。骨盤と大腿骨(太もも)のつなぎ目の部分を指します。大腿骨と骨盤が接している部分が球状の「骨頭」。「骨頭」の下の細くなっている部分が「頚部」と呼ばれます。この細い「頚部」の部分に強い力が加わることで骨折が起こるのですが、やはり骨粗鬆症など骨が脆くなった高齢者に多発する傾向があります。

骨折にも順番がある?

上記3種類の骨折は年齢によって、発生する割合が違うと言われています。橈骨遠位端骨折(手首)は比較的若い(高齢者の中では)世代、腰部圧迫骨折(腰)や大腿骨頚部骨折(足の付け根)は特に高齢の世代にて発生しやすくなっています。

では何故、橈骨遠位端骨折(手首)は比較的若い世代に多く発生するのでしょうか?それは、転倒時の身体の反応に違いがあるからと考えられます。

皆さんが転びそうになった場合、まず「手」が出ませんか?転倒した際に「手」が出ることは、身体に本来備わっている防御的な反応といえます。転倒した際に頭や胴など特に大事な部分を守るために、無意識に「手」が前に出るのです。

年齢を重ねていくと、この防御的反応である「手」が出なくなる、反応が遅くなるなどが目立ち始めます。結果、腰や足に直接が衝撃が加わることになり、腰部圧迫骨折(腰)や大腿骨頚部骨折(足の付け根)の骨折に繋がっていくのです。

骨折別による日常生活動作(ADL)への影響

橈骨遠位端骨折(手首)

手首の骨折であるため日常生活動作(以下ADL)への影響は3種類の中では最小限に留まることが多くなります。利き腕かそうでないかによってADLへの影響は大きく変わりますが、利き手の骨折であっても、一定の時間が経過すれば、「非」利き手であっても、ADLは自立レベルとなる場合が多くなります。

腰椎圧迫骨折(腰)

「いつの間にか骨折」と言われる、強い痛みを伴わない場合もありますが、しりもちなど原因がハッキリしている場合は、強い痛みを伴う場合が多くなります。身体を少し動かすだけでも強い痛みが起こるため、基本的にはベッド上で寝たきりの生活になります。

本人専用のコルセット(軟性、硬性など様々なタイプがある)が完成してから離床を始めますが、ベッド上寝たきりの生活が一定期間続くため「廃用症候群(筋力、心肺機能、認知機能などの低下)」に陥ることが多くなります。結果、ADL能力の低下にも繋がってしまいます。

大腿骨頚部骨折(足の付け根)

大きな荷重(体重)が細い部分(大腿骨頚部)にかかるので、骨折をしてしまうと立つことは勿論、寝返りなども困難となります。結果、ベッド上寝たきりとなり廃用症候群の進行からADL低下に繋がってしまいます。また、骨折後のリハビリテーションでは免荷(体重を全くかけない)、部分荷重(1/3→1/2など段階的)、全荷重(通常通り)など繊細で根気が求められる作業が続きます。

重傷になるのは、脚の骨折
高齢者の骨折事故全体では死亡・重症・中等症(以下、重傷)は51.8% であるが、大腿・下腿の骨折はこれが89.5% と非常に高くなる。重傷の割合が、高齢者の骨折事故全体における割合を上回っているのは、大腿・下腿の骨折だけである。
(注) 危害情報では程度をつぎのように分けている。
軽症:入院を要さない状態。
中等症:生命に危険はないが入院を要する状態。
重症:生命に危険が及ぶ可能性が高い状態。

引用:独立行政法人 国民生活センター

骨折につながる要因

骨折につながる要因には、骨そのものの問題に加えて、転倒など骨へ直接的な外力が加わること(きっかけ)が考えられます。

原因は、圧倒的に「転倒」が多い
骨折事故のきっかけは、「転倒」「転落」「ぶつかる」「挟む」などがあるが、年代別にみると高齢になるほど「転倒」が増え、70代で61.7% 、80代で73.2% になり、90代では95.7% とほとんどが転倒による骨折になる。

引用:独立行政法人 国民生活センター

骨の脆弱性(頑丈さの低下)

特に高齢の女性などは、ホルモンバランスの変化により骨密度が減少し易くなります。結果、骨の中がスカスカの状態となり骨の脆弱性が進行することになります。これにより、軽い外力などによっても簡単に骨折し易くなります。

バランス機能の低下

バランス機能とは、本来筋力など様々な機能の統合的な反応を総称して呼ぶものです。ここでは、転びそうになった時に身体を引き戻す、転んだ場合でも被害を最小限に留める(受け身のようなもの)能力を指して説明します。

認知機能の低下(認知症など)

認知症とは、以下の能力に障害(中核症状)が発生することで、「日常生活の自立を阻害」されている状態を指します。

  • 注意⇒特定の物事に一定の集中を続ける能力
  • 実行機能⇒目的を達成するために、一連(複数)の行動を行う能力
  • 記憶⇒物事を覚えておく能力
  • 言語⇒考えを言葉にする、言葉を理解する能力
  • 知覚運動⇒視覚や触覚などにより受けた感覚を利用して、効率的な運動を行う能力
  • 社会的認知⇒社会的ルールを守るなど、社会生活を営むための能力

参照:認知症と下関バリアフリー観光

危険回避などの認知的側面に関しては、上表太字の「注意、実行機能、記憶、知覚運動」障害が主な要因としても考えられます。

  • 「注意」⇒危険を認識する能力。
  • 「実行機能」⇒例)お盆を持って歩きながら段差を跨ぐなど…。通常の生活では複数の活動を同時に行う能力が求められる
  • 「記憶」⇒例)ここは以前急いでいてつまづいてしまったので、ゆっくりと歩こうなど…。以前の経験(危険)を留める能力
  • 「知覚運動」⇒上表、バランス機能にも直結する能力

2回目の骨折を防止することが大切

一度、骨折をすると2回目の骨折も起こし易くなることが研究報告されています。また、複数の骨折を繰り返す高齢者はADLや生命予後も悪くなることも報告されています。

比較的若い場合の転倒では、橈骨遠位端骨折(手首)の割合が多く、ADLへの影響も限定的となっています。しかし、そのまま何もしないと、骨折につながるリスク要因(骨脆弱性・バランス機能低下・認知機能低下)が段々を大きくなっていきます。結果、転倒などによる2回目の骨折で、腰椎圧迫骨折(腰)や大腿骨頚部骨折(足の付け根)となり、寝たきり(死亡リスク上昇)へとつながっていきます。

骨折につながる転倒が起きやすい環境とは?

階段での骨折が最も多く、以下、道路、床が多い
780件中、階段での骨折が121件(15.5% )、道路での骨折が89件(11.4%)、建物内の床での骨折が75件(9.6%)である。以下、自転車、風呂場、いすと続き、10位の自動車までで約7割を占める。
780件中、家庭内で起きたことが分かっている事故は409件(家庭の内か外かが分かっている事故の57.3%)である。

重傷事故は、階段、床、ベッドなどでの骨折が多い
重傷の割合が、高齢者の骨折事故全体における割合を上回るのは、階段の57.0%、床の54.7% 、ベッドの54.5% 、風呂場の53.5% である。家庭内で起きた事故も、家庭の外で起きた事故も、重傷の割合はほとんど違いがなかった。

引用:独立行政法人 国民生活センター

ベッド・布団まわり

夜間のトイレや朝一番の寝起き状態にてベッドから降りる、布団から起き上がるなど身体が大きく動く動作(重心の上下)を伴う際に転倒が発生し易くなります。

ベッド周囲にフットライト(部屋全体は明るくしない)を設置する、ベッド上にて軽く身体を動かすなど時間をおいて起き上がるなどの対策が重要となります。

階段まわり

階段昇降は平地歩行と比べて、より高度な筋力やバランスのコントロールを求められます。高齢者など心身機能の低下が進行している場合には、階段昇降はよりハードルの高い動作となります。

屋内外を含め、階段まわりは最も高低差がある環境となります。もし、階段上部にて転倒した場合には、階下まで数メートルも転落することになります。結果、重症化する可能性も高くなります。

適切な位置に手すりを設置する。階段(踏面)に滑り止めを設置する。フットライトなど照明を増設するなどの対策が重要となります。

居室(リビング)まわり

居室は主な生活(居住)の場となる為、様々な物(障害物)が存在する可能性があります。カーペットなどの僅かな段差(数cm程度)、カーペットが固定されておらず滑ってしまうこと、コタツなどのコード類など多くの可能性(リスク)が考えられます。

居室内に不要な物を置かずに極力シンプルにすること。動きやすい物は必ず固定すること。コードは出来るだけ壁際を通るように配置・配線を工夫すること。フットライトなど夜間の照明を増設することが重要となります。

浴室・脱衣所まわり

浴室・脱衣所とその他の部屋の違いとは?

  • 床面が滑りやすい⇒お湯や石鹸の泡など特に滑りやすい環境となっている
  • 段差が多い⇒脱衣所と浴室の間は水の侵入を防ぐ為に敷居が高い
  • 暗い⇒一般的な浴室は照明が1灯の場合が多く明るさは最小限
  • 裸とお湯⇒血圧の変動が大きくなりがち(立ち眩みなど発生)
  • 着替え⇒下衣を着脱する際などに片脚立ちになるなど不安定な姿勢になり易い

上記理由にて特に転倒・骨折が発生し易い環境となります。加えて、浴室・脱衣所では「溺れる」などにより命に直結する問題ともなります。浴室・脱衣所での転倒・骨折対策は特に重要となります。

まとめ

  1. 骨折は要介護(支援)状態への入口⇒要介護状態の防止は骨折の防止から
  2. 高齢者の代表的な骨折は3種類⇒橈骨遠位端骨折(手首)、腰椎圧迫骨折(腰)、大腿骨頚部骨折(足の付け根)
  3. 3種類の骨折は段階的に重症化(ADLへ影響)する⇒橈骨遠位端骨折(手首)→腰椎圧迫骨折(腰)→大腿骨頚部骨折(足の付け根)
  4. 骨折に繋がるきっかけ⇒転倒が圧倒的に多い(高齢になるにつれて割合は増加)
  5. 骨折に繋がる要因⇒骨の脆弱性、バランス機能の低下、認知機能の低下
  6. 2回目の骨折を予防することが大切⇒2回目の骨折は生命予後が悪化
  7. 骨折に繋がる転倒が起き易い環境⇒ベッド・布団、階段、居室(リビング)、浴室・脱衣所

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