見当識障害の解釈とリハビリテーション方法
目次
見当識とは?
見当識とは、今現在の日時、今いる場所、知り合いの顔や名前など、自身が今現在どういった状況に置かれているかを把握する能力を指します。
私達が普段の生活で意識することはありませんが、もし自分が見当識障害に陥ったらパニックになるのではないでしょうか?見当識とは記憶などと共に、自分を自分たらしめる重要な能力と言えるでしょう。
長い連休に入ってしまうと、今日が何曜日か?何日か?など曖昧になった経験はありませんか?私達は職場や学校などとの関係性の中で見当識を補完していることが分かります。自分だけで見当識を維持する能力は意外に脆弱であるということが分かりますよね。
見当識障害とは?
認知症の中でもアルツハイマー病に頻発する症状と言われています。記憶障害に次いで、早期より障害を受けているケースも多い為、障害に早めに気づくことが重要となります。
症状の出方は進行の度合いによって違いがあります。一般的には「日時⇒場所⇒人物」の順で症状が出てくると言われています。
因みに、代表的な認知機能検査である長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では、1~3の質問項目が見当識の評価を行っています。
見当識障害への対応方法
大きく2つに分けることが出来ます。一つは症状が出たときの対応方法。もう一つは症状の改善や予防を目指すリハビリテーションです。
症状が出たときの対応方法
基本的には認知症への対応と同じと考えます。否定せず、余裕を持って傾聴、相手の自尊心を傷つけないなどの対応方法が原則となります。
リハビリテーション
認知症患者さんへのリハビリテーションプログラムを共用して利用することが出来ます。
24時間リアリティオリエンテーション(現実見当識訓練)
24時間リアリティオリエンテーションを一言で説明すると、日常生活の中で見当識(時・場所・人)を意識する仕掛けを施すことと言えます。
自身やスタッフに名札を付けて名前で呼ぶ。時計やカレンダー、新聞、ラジオなどを目立つようにして(矢印など使用)注意を引く。自身の持ち物には名前を記入する。「〇〇さん、12時になるので昼食ですよ」など、時間を意識させたスケジュール管理などが挙げられます。
集団訓練(集団現実見当識訓練)
スタッフが進行役となって複数の参加者と実施します。ホワイトボードなどに見当識に関する情報(日時・天気・今日は何の日など)記載して、一緒に声に出して読んだりします。
集団の習熟度(または見当識障害が重度)が低い場合は少人数で行い、場合によっては補助スタッフも付きます。習熟度が上がるにつれて集団の人数を大きくしていきます。また、訓練内容も過去の出来事や、時事ネタなど回想法の手法を取り入れるなどして難易度を上げていきます。
意識障害と高次脳機能障害の区別
見当識障害の原因として、意識障害と見当識障害に分けることが出来ます。鑑別に関しては総合的な所見から判断する必要があります。おおまかな目安として「臨床高次脳機能評価マニュアル2000」では、名前、年齢、場所の認識が保たれている場合には意識障害の関与は少ないと説明されています。
まとめ
冒頭でも述べたように、見当識能力を維持・改善するキーは周辺環境との関係性を保つことにあります。在宅生活であれば「地域活動への参加」と言えるでしょう。
公的なものとしては、通所リハビリ(デイケア)などの介護保険サービスが代表的です。私的なものとしては、趣味、老人会、ボランティア、仕事なども挙げられます。
現在の環境で利用可能な公的手段と私的手段を上手く組み合わせて活用していくことが大切になります。