
認知症テスト-相手を不快にしない方法「N式老年者用精神状態尺度」
目次
代表的認知症評価スケールの問題点
代表的な認知症テストとして、長谷川式簡易知能検査(以下HDS-R)があります。HDS-Rは比較的簡単で短時間に実施することができ、結果の妥当性も証明されています。しかし、幾つかの課題があるのもまた事実です。
- 質問の内容が「バカにされた」と感じてしまう場合がある。特に若年者や認知症初期の方にその傾向が強い。
- 重度の難聴や失語症など、コミュニケーションに問題がある場合は、結果の妥当性が落ちてしまう。
- そもそも、相手が協力してくれなければテストそのものが成り立たない。
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HDS-Rの課題をカバーする方法
HDS-Rの本質である「当人に対する口頭での質問法」が、上記1~3の課題に繋がっていると考えられます。
では、HDS-Rの課題をカバーするためにはどうすれば良いのか?
直接当人に質問するのではなく、一番近くで見守ってきた家族や施設職員に様子をうかがう方法があります。それは「N式老年者用精神状態尺度(以下NMスケール)」というものになります。
NMスケールとは
「家事、身辺動作」「関心、意欲、交流」「会話」「記銘、記憶」「見当識」の各項目別に、どの区分に当てはまるかを評価した後、各項目の点数を合計します。寝たきりなどベッド上での生活の場合は、「会話」「記銘、記憶」「見当識」の3項目で評価します。
Nスケールの長所
- 直接当人に評価を行わないので、当人を不快にすることがない
- 当人にコミュニケーション能力の障害があったとしても評価が可能
- 当人に協力性がなくても評価が可能
- 検査の場所や時間を問わないため、いつでも評価が可能
- 家族や施設職員が当人をどう捉えているかが分かる
NMスケールの短所
- 評価者の能力(知識・経験)によって点数のバラつきが大きくなる
- 質問に答える方(家族や施設職員)の印象(先入観)に大きく左右されることがある
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NMスケールの利用方法
NMスケールは、ただ認知症の有無を確認するための評価ではありません。
境界から軽度の認知症予備軍の早期発見
HDS-Rに関しては、合計20点を境界に「認知症疑い」か「非認知症」の評価が行われますが、NMスケールに関しては、5段階の評価が行われるため、より早期に認知症疑い(境界~早期)の状態を発見することが可能となります。
家族や施設職員の認知症に対する捉え方を知ることができる
認知症の本質的な問題の一つに、「当人と介護者との認識のズレ」が挙げられます。NMスケールは介護者が問題をどのように捉えているかを確認する手段にもなります。
NMスケールを使用する際の注意点
- 家族もまた不安な状態にあることを忘れない⇒安易に「認知症のテストをしましょう」とは言わない
- 質問に答える方(家族や施設職員)の印象(先入観)に大きく左右される可能性を踏まえて判断する