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IADL「洗濯」問題点と対応方法

目次

洗濯動作とは

日常生活を営んでいくうえで、自身の衣服やリネン類などを清潔に保つ為に「洗濯」は必要不可欠な動作と言えます。また、IADLの中でも比較的高い身体機能を求められる動作とも言えます。

例えば、水を含んだ重い洗濯物を前かがみの態勢で取り出す動作であったり、自身の頭より高い位置の物干し竿に洗濯物を干す動作などが挙げられます。

つまり、洗濯動作を安全に行う為には、より詳細な身体機能の評価を行うこと。問題のある動作に関しては、適切な対処を行うことが求められます。

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洗濯動作の動作別分類

  1. 洗濯物を洗濯機の中に入れる
  2. 洗剤を洗濯機の中に入れる
  3. 洗濯機のボタンを押す
  4. 洗濯機から洗濯物を取り出す
  5. 洗濯物の運搬
  6. 洗濯物を物干し竿に干す
  7. 洗濯物を物干し竿より取り込む
  8. 洗濯物の運搬
  9. 洗濯物をたたむ・収納

洗濯動作の動作別分析と対応方法

1.洗濯物を洗濯機の中に入れる

分析

洗濯機はドラム型と縦型に大別されます。ドラム型の場合、投入口が低い位置(斜め上を向いている)ある為、洗濯物が入れ易くなります。反面、扉がそのまま横に開く為、洗濯機と一定の距離をとって、開閉ボタンを押す必要があります。

縦型の場合、投入口は上側に開いています。ドラム型と比べると高い位置にある為、車椅子での利用は難しい場合もあります。扉は上側に向かって開く為、洗濯機に近づいて開閉操作を行うことが出来ます。

ドラム型、縦型共に、洗濯物を掴む・離すなどの能力が必要となります。

対応方法

洗濯物の投入に関しては、車椅子ユーザーなどはドラム型の方が行いやすくなります。また、洗濯機の中に脱いだ衣類をそのまま入れておけば手間が省けますが、衛生管理上、オススメはできません。

ただし、ドラム型洗濯機の扉の開閉方向に関しては十分な注意が必要になります。前述したように、扉が横方向に開くため洗濯機前方に一定のスペースが必要となります。

加えて、一般家庭の脱衣所スペースは限られていることから、扉の開閉方向に注意する必要があるのです(車椅子の進入方向に開閉しない)。

2.洗剤を洗濯機の中に入れる

分析

ドラム型、縦型共によって洗剤の投入口の場所は微妙に違いますが(ドラム型⇒右手前・縦型⇒中央奥)、基本的には小さなケース(引き出し)を引いてから投入することになります。

また、洗剤を取り出して投入する一連の動作にも一定の身体機能が求められます。以下は近年の主流である液体洗剤について分析を行います。

  1. 非利き手でボトルを固定、利き手でキャップを摘まんでひねる
  2. 利き手でキャップを固定、非利き手でボトルを傾けて(手関節回内)洗剤をキャップに注ぐ⇒ある程度の重量があるボトルから小さなキャップに注ぐ為、高度な協調性や筋力などの能力が求められます。
  3. キャップから洗剤投入口へ洗剤を投入(前腕回内)。
対応方法

一般家庭では液体洗剤が主流ではありますが、粉洗剤やボールタイプ(固形)などもあります。粉洗剤の場合は箱に入っている為、箱を洗濯機の上に置いた状態で洗剤を投入することが出来ます。つまり、片手でも洗剤投入が出来るということです。

ボールタイプの特徴は片手で行えることに加えて、量の細かな調整が必要ないことなどが挙げられます。よって、より簡単に洗剤投入を行うことが出来ます。

ただし、ボールタイプの注意点として、少量頻回に洗濯を行う場合はコストパフォーマンスが悪くなる恐れがあります。ある程度の洗濯物が溜まった状態で行う必要があります。使用量の細かな調整が出来ないことの欠点ともいえます。
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3.洗濯機のボタンを押す

分析

ドラム型の場合は上部前面に斜め上向きにボタンが配置されていることが多い為、操作し易くなっています。反面、縦型の場合は上部後面などに上向きでボタンが配置されている為、車椅子などでは利用し辛い(視認が難しい)可能性があります。

ボタンの反応性もやや硬い印象(ボタンを押す為に力がいる)を受けます。誤操作を防止する為に意図的に調整されている可能性もありますが、ボタンを押す指にある程度の力が必要となります。

洗濯機の高機能化に伴い、多くのボタン(コース)が配置されるようになってきました。認知機能低下の方などでは、利用が難しいケース出てきています。

対応方法

車椅子などの場合には、ドラム型の方がオススメとなります。ボタンを押す力が弱い場合は万能カフを利用してペン先でボタンを押すなどの工夫が必要となります。

認知機能低下の方などによるボタン操作の困難さについては、必要なボタン以外はカバーをして目に入らないようにする手もあります。日常的に使用するボタンは限られているうえ、自分流のコースを設定すれば、以降はボタン一つで洗濯が可能となります。
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4.洗濯機から洗濯物を取り出す

分析

洗濯が終了した直後の洗濯物は濡れて重量が増し、それぞれが絡まった状態になっています。これを外に取り出すにはかなりの重労働になります。

対応方法

一般的にはドラム型の方が縦型よりも絡みが少ないと言われています。ただし、最新機種では縦型であっても「絡み防止機能」の付いたタイプも販売されています。

ドラム型、縦型共通して言えることですが、洗濯物は大量に入れない(最大容量の8割程度)。柔軟剤を使用する。洗濯ネットを活用するなどの工夫にて、ある程度は対処が可能となります。

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5.洗濯物の運搬

分析

物干しスペースは、ベランダなど屋外と浴室など屋内に分けられると思います。一般的には洗濯物の乾きを考えて屋外で干すことが多いのではないでしょうか?

洗濯物を屋外で干す場合は、洗濯機のある場所(洗面所・脱衣所)から距離があることが多くなります。また、屋内から屋外への移動となる為、高低差や段差などのバリアも存在してきます。

上記のような移動条件に加えて、水分を含んだ思い洗濯物を両手で抱えて運んでいくことは、転倒などのリスクを高める恐れも出てきます。

対応方法

まずは、物干しスペースまでの動線を短くすることを優先します。例えば、脱衣所の直ぐ隣りにある浴室は、換気扇が付いている場合も多く乾燥し易い環境となっています。「突っ張り棒」などを使用することで簡易的な物干しスペースを作ることも出来ます。

止むを得ず、屋外を物干しスペースにする場合でも、洗濯物の運搬は両手が塞がってしまう洗濯カゴなどは避けましょう。肩掛けや背負うタイプを使用して、両手が必ず空いた状態になるようにしましょう。

6.洗濯物を物干し竿に干す

分析

物干し竿に洗濯物を干す作業は、自身の頭よりも高い場所(物干し竿)と床面(洗濯カゴ)との往復動作を繰り返すなど、非常に高度な身体機能(可動域・バランス能力・筋力・耐久性)が求められます。つまり、身体的なリスク(転倒・疲労など)が高いとも言えます。

加えて、洗濯物をハンガーに通したり、洗濯バサミで挟む動作などは、両上肢や手指の巧緻性(細かい動き)が求められます。

対応方法

物干し竿の位置を低くすることが効果的です。座って(机上などで)作業が行えることが理想です。据え置き型や高さ調整の出来る物干し竿の利用が効果的です。

7.洗濯物を物干し竿より取り込む

分析

「6.洗濯物を物干し竿に干す」と逆の手順となります。求められる能力も基本的には同様となります。また、洗濯物が乾いてる分軽くなり、扱いやすくなっています。

対応方法

上記同様に、「6.洗濯物を物干し竿に干す」に準じるかたちとなります。加えて、引っ張るでけで沢山の洗濯バサミを簡単に外せるような商品を利用することもオススメです。

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8.洗濯物の運搬

分析

「5.洗濯物の運搬」と同様の手順となります。求められる能力も同様となります。また、洗濯物が乾いてる分軽くなり、扱いやすくなっています。ただし、運搬先は洗濯物をたたむ場所となる為、「5.洗濯物の運搬」とは動線が変わる場合もあります。

対応方法

上記同様に、「5.洗濯物の運搬」に準じるかたちとなります。

9.洗濯物をたたむ・収納

分析

洗濯物の種類に対応した、たたみ方が求められる為、洗濯動作の中では難易度の高い動作と言えます。特に両上肢や手指の協調した動きが求められます。

たたんだ洗濯物は、たたんだ状態が崩れないように注意しながら収納場所(衣類ケースなど)まで持って移動する必要があります。

対応方法

シワを気にしなくてもよい洗濯物(タオルや肌着)は、丸めてしまうだけで簡単にたたむことが出来ます。シャツなどシワが気になる洗濯物は、干していたハンガーのまま収納する方法もあります。一定の収納スペースが必要になりますが、たたむ手間が省けるうえに綺麗な状態で保管出来る為、オススメの方法です。

一般的に、衣類(洗濯物)を収納する場所とたたむ場所は違うケースが多いと思われます。収納場所でたたむなど動線を短くすることも考える必要があります。

乾燥機の使用

乾燥機(乾燥機付き洗濯機)を使用すれば、上記「5.洗濯物の運搬~7.洗濯物を物干し竿より取り込む」まで省略することが可能となります。ただし、電気代が増加する。衣類のシワが寄りやすくなる。フィルターの掃除が必要になるなどの問題も発生します。

最近は、乾燥機(乾燥機付き洗濯機)の機能向上も進んでいる為、上記問題も少なくなってきています。効果と問題の双方を良く検討したうえで導入をしましょう。

衣類の生地を検討

シワになりにくい、乾きやすいなど、洗濯のし易さで言えば「化学繊維」がオススメです。以前は独特の肌触りや匂いなどで敬遠されるケースもありましたが、最近は、それらの問題を解消した「化学繊維」も多数出てきています。加えて、複数の機能(体温調節、アイロン必要なしなど)も追加されている為、検討する価値はあります。

介護保険サービスの利用

洗濯動作が難しいと判断された場合、介護保険にてヘルパーを派遣して洗濯を行うサービスを検討されるケースが多くなっています。ただし、介護保険サービスの目的として「自立支援」が挙げられているように、全ての動作をサービスで賄うのではなく、本人出来る動作は本人が行うなどの工夫が必要と考えます。例)洗濯機の操作までは自身で行い、危険を伴う洗濯干しの動作はヘルパーが行うなど。

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