肺を鍛えて健康管理~自宅で出来る肺機能アップトレーニング~
目次
はじめに
感染症が猛威を振るう世の中の情勢を見る中で、改めて「肺機能」という根本的な能力が予後(病気の経過)をに影響するのかな?と感じています。
そこで、私自身の復習の意味も兼ねてこちらでアウトプットしていこうと思います。
呼吸のメカニズム
息を吸う(吸気)
- 横隔膜(おうかくまく)と、外肋間筋(がいろっかんきん)と呼ばれる肋骨と肋骨の間の筋肉が縮む
- 胸郭(きょうかく)と呼ばれる、胸を取り巻く骨(肋骨など)が広がる
- 肺が膨らんで空気を取り込む
※呼吸を補助する筋肉として、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)、斜角筋(しゃかくきん)、僧帽筋(そうぼうきん)が挙げられる。
息を吐く(呼気)
- 横隔膜と外肋間筋がが緩む
- 胸郭が狭まる。
- 肺が縮んで空気を押し出す
※喘息(ぜんそく)など努力して息を吐く場合には、内肋間筋(ないろっかんきん)や腹筋なども使用する。
「息を吸う」⇒筋肉の働きによる意識的な動き⇒能動的
「息を吐く」⇒肺の弾性(ゴムのような作用)を利用した無意識的な動き⇒受動的
酸素を運ぶ
呼気で取り込まれた酸素は、身体の各器官に運ばれてエネルギー生産(代謝)に利用されます。
効率的な酸素運搬には血液量(血流)とヘモグロビン量が重要
「代謝」については以下のページをご参照下さい。
二酸化炭素を排出
各器官でのエネルギー代謝で発生した二酸化炭素は、血流に乗って肺に運ばれ外界に排出されます。
呼吸の調整
延髄や橋にある呼吸中枢による働きにより、運動時や睡眠時など体内での酸素需要と供給のバランスでも調整を行っています。また、不安・恐怖など感情変化が刺激となり、視床下部に作用して反射的に息を止めたり、呼吸が速くなるような調節機能もあります。
呼吸障害のタイプと代表的な病気
呼吸障害は大きく3つのタイプに分けることができます。
換気の障害
気道閉塞、胸郭運動障害、呼吸中枢障害によって換気(空気の出入り)ができなくなる障害です。「息を吸いたくても吸えない」「息を吐きたくても吐けない」など、いわゆる呼吸困難の状態です。
ガス交換の障害
- 拡散障害⇒「十分な換気」「肺胞と血流の接触が維持」「血流が維持」、3条件中1つでも障害されると酸素欠乏となる。
- 換気血流比不均衡⇒肺胞レベルでの換気と血流のバランス不良が起きている状態。
酸素運搬の障害(ガス交換に問題なし)
- 心拍出量減少(心臓が血液を送り出す能力)による血液量減少。
- ヘモグロビン量不足による血液中の酸素含量低。
⇒身体の各器官での酸素欠乏により呼吸困難が生じる。
酸素が不足することによる身体への影響
酸素が不足すると全身に様々な症状が表われてきます。臓器ごとの症状と状態について下表にまとめてみました。
呼吸機能の「主観的」評価方法
呼吸機能評価は様々な種類が開発されています。ここでは、自分自身で行うことが出来る主観的評価「修正ボルグスケール」を紹介します。
修正ボルグスケールとは、人それぞれ感じ方の違う、運動時のきつさや疲労の感じ方(主観)を数字で表す方法です。運動を行う際は、「3~5」の(表中黄色)の範囲で行う様に調整します。
数字が「7」を超えてくると身体への負担が大きくなる為、運動を中止する目安となります。
呼吸障害がもたらす日常生活への影響
呼吸困難や息切れなどは、次々に負の連鎖に繋がっていきます。出来るだけ早い段階で負の連鎖を断ち切ることが重要です。
呼吸障害がある場合の対応方法
呼吸困難が生じる生活上の動作を知る
「修正ボルグスケール」を利用して、自分自身で呼吸困難の程度を評価します。評価を通して、日常生活動作上で安全な呼吸困難の程度を把握します。
日常生活での呼吸法と排痰法(はいたんほう)を知る
口すぼめ呼吸や腹式呼吸を日常生活全般に取り入れて、自分に合った動作・行動で日常生活を維持していきます。
口すぼめ呼吸
- 1,2で鼻からゆっくりと息を吸う。
- 笛を吹くように口をすぼめて、3,4,5,6でゆっくりと息を吐く。
- 何か動作をする際は、口すぼめ呼吸の方法に合わせて動作を行う。
ハフィング(排痰法)
- 鼻からゆっくりと大きく息を吸い、いったん息を止める。
- 左右の腕を交差させて両側の横腹に当て、上体を前に傾ける。
- 腕で横腹を押さえた状態で、口を少し開けて大きく2回咳をする。
- ゆっくりと上体を起こし、手元に戻しながらゆっくりと息を吸う。
- ①~④を、休息を入れながら喉の近くまで痰を動かして痰を出す。
呼吸困難を起こさない生活の工夫
呼吸困難を起こしやすい動作例
- 坂道や階段の歩行
- 衣服の着脱や洗髪など腕を上げる動作
- 入浴時の身体洗い・拭き掃除・掃除機をかけるなどを使用した反復運動
- 前かがみでの靴下着脱など腹圧がかかる動作
- 洗顔や排便など一時的に息こらえをする動作
対応方法
- 十分に息を吸った後に、息を吐きながら動作を行う
- ゆっくりと動作をする
- 余裕ある生活リズムを確立する
症状悪化の予防と早期対応
悪化時の症状変化
呼吸困難の悪化が最も気づきやすい変化です。一緒に表れる症状として、発熱、痰の増加、痰の状態の変化、チアノーゼ(血液中の酸素欠乏により皮膚などが青黒くなる)、動悸、頭痛などが挙げられます。
早期対応
- 気管支拡張薬の吸入
- 楽な姿勢で安静を保つ
- 不必要な動作を避ける
- 一度の食事量を少なくして休息を入れながらゆっくりと行う
- 早期対応ができるような家族指導も重要
負の連鎖を防止する運動療法
負の連鎖
呼吸の苦しさから活動の制限が起きてしまうと、下図の様に身体機能に関しても負の連鎖が起きてしまいます。この負の連鎖を如何に食い止めるかが重要なポイントになります。
運動療法
胸郭の柔軟性を高めるストレッチが効果的です。痛みや疲労感が出ない無理のない範囲で行いましょう。
まとめ
- 呼吸は横隔膜と肋間筋が中心的な役割を担っている
- 吸気はは能動的、呼気は受動的
- 呼吸障害は「換気」「ガス交換」「酸素運搬」の3種類が代表的
- 酸素が不足すると身体のあらゆる器官に影響が出てくる
- 主観的呼吸評価法である「修正ボルグスケール」を活用する
- 呼吸障害による負の連鎖を断ち切る
- 呼吸困難の起きやすい動作など自身の特徴を知る
- 呼吸法と排痰法を身に付ける
- 悪化時に起こる状態変化の把握と早期対応を心掛ける
- 無理のない範囲で胸郭柔軟性ストレッチを行う